中筋純写真展「黙示録チェルノブイリ 再生の春」新宿ニコンサロン
新宿ニコンサロンで開催中の写真展「黙示録チェルノブイリ 再生の春」を観てきました。『廃墟チェルノブイリ』などの写真集を出されている中筋純さんの写真展です。中筋さんは『廃墟本』などでも知られる写真家です。
ご本人に話を伺うことができました。奇しくも本作品展の準備期間中に福島第1原発の電源喪失事故が起こりました。どういう偶然なのか。チェルノブイリの教訓を学んでこなかった、と中筋さんが語るのを間違いとは言えないでしょう。
会場内に展示されている写真は、チェルノブイリの原発や、その周辺の街や自然を写したものばかり。チェルノブイリが撮影したいと言うことで許可を得て現地で撮影をされたとのこと。
原発内部や周辺のすてられた家屋の光景が痛いように目に飛び込んできて、廃墟写真の好き嫌いをとわず不安をかき立てられます。
廃墟の写真と言っても、周囲の街はやむを得ず避難で人が今なくなった家など。誰も捨てたくて捨てたものではないのでが、これだけの年月が経つと、手入れされず朽ち果てていってしまうということがよくわかります。
やむなく捨てられていったものの写真は、閉園された遊園地などと違い、胸がつまる思いがします。
おそらく原発事故が無い平時にこの写真展を観たら、余所事のように感じていたでしょうが、いまは日本でこれに近い状況が進行中であることが、写真を真剣に受け止めさせるのだと思います。
その一方で廃墟写真としての侘びしいながらも美しい描写も感じられます。それは丹念に写し撮られた被写体の降り注ぐ光と影、そして自然との対比でしょう。自然の力は避難区域に関係なく、森は緑豊かに再生し、秋には紅葉しています。いずれチェルノブイリも緑に飲み込まれてしまうのかもしれません。
本写真展の作品は、2009年に写真集『チェルノブイリ 春』として出版されています。こちらも手に取ってみてください。
チェルノブイリには1週間などまとまった時間を取って撮影に訪れているという中筋さん。今後はチェルノブイリの冬も訪れることを考えているとか。
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