北野武監督作品「アウトレイジ」
北野武監督の最新作「アウトレイジ」を観に行きました。ここ最近の北野作品は実験的・自虐的な要素が強かったのですが、今回は久々の「ヤクザモノ」です。
評価は二分されているようですが、個人的には楽しめました。人が殺されるシーンが多く出てくるため後味の悪さは残るものの、北野監督らしいあっさりとした切り口で編集された映像の連続は、フジテレビ映画では味わえないものです。
CG をほとんど使わず、役者の演技と撮影と演出・編集で構成されたスタイルが、本来の映画の良さを感じさせてくれます。ただ、本作ではこれまでの北野映画の常連組を起用していないので北野映画らしくない雰囲気も感じられました。
主役のビートたけしが脇役に見えるほど、個々の登場人物の味付けが富んでいて、アクが強く、楽しめます。登場人物はたくさんいますが、主要キャストそれぞれの関係などはわかりにくいということはありません。
またストーリーも練られており、ただ暴力団同士の抗争を描いただけではなく、全体として一つの下克上劇となっています。だれが最後に残るのかという点では意外な結果となりましたので、そういった意味ではエンターテイメントとして楽しめる作品でもあります。
残念なのは椎名桔平で、あまりヤクザに見えないですし、ベッドシーンは余計だったと思います。かんとくによれば彫り師の人がせっかく描いた刺青を見せるために追加したシーンだということですが、そういう余計なものをストイックに切り捨てた編集が北野映画の特長だと思っているのでここは残念なところです。
鈴木慶一の音楽はいい雰囲気です。スリリングな雰囲気や緊張感を盛り上げてくれています。
あとはセルシオなどの高級車がたくさん出てきますが、破壊されないんの今一つ。ハリウッド映画なら惜しげもなくクラッシュしたり爆破されるところですが、借り物で CG も使わないので仕方ないのでしょうか。
一方で、登場人物の着る高級なスーツは容赦なく血糊に染まったりします。たけし演じる組長の服は山本耀司だそうですが、ほかにもヨウジヤマモトと思われるデザインのスーツがたくさん出てきて映画の雰囲気作りに一役買っていますね。こういった細かい部分も見所かもしれません。
テレビドラマ的な演出のフジテレビ映画よりはマトモな映画らしい映画だと思います。でも残酷なシーンが多すぎるので美祢場合は覚悟が必要です。
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