森山大道『犬の記憶』
2010-7-11 13:39
写真家森山大道氏の写真とエッセイを収めた文庫本『犬の記憶』は、森山大道の70年~80年代におけるエッセイを収めたロングセラーだ。
本書の前半「犬の記憶」は、当時のアサヒカメラでの連載を収録している。やや飾った文章で難しいと感じる。ここは氏のような路上でマシンガンのように連写するという行為や、犬のように路地を這い回って撮影した経験がないと共感できないのではないだろうか。
しかし、写真とは何かを追及し続ける森山大道の姿には、非常に引きつけられるものがある。写真を撮るという行為においてもこれだけスタンスの違いを見せつけられると呆然としてしまう。
個人的には後半に収録されている「僕の写真記」のエッセイの方が面白く読めた。こちらは森山大道がいかにして写真の道に入り、上京したのかが綴られている。東松照明・細江英公・中平卓馬や山岸章二といった人々との邂逅も語られている。あまり難解に格好付けた文章ではないので前半にくらべて読みやすい。
文庫本の体裁だが氏のエッセイだけでなく、モノクロの写真も多数収録されている。森山大道を知るにはピッタリの入門書と言えるだろう。彼の作風に引かれる人ならば、独特の表現が迫ってくる感覚に、何とも言えない感傷に浸れることだろう。
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